Column

マイクロモビリティは将来のモビリティとなりうるか

フロスト&サリバン アジア太平洋地域 自動車・交通運輸部門コンサルタント
森本尚

2014年10月22日掲載


マイクロモビリティは、個人の移動ニーズを満たすためにデザインされた一人もしくは二人乗りの乗り物である。運転性能は、通常の車ほどよくはないが、短距離の移動には十分な性能を備えている。日本においても、国土交通省が道路運送車両法に基づく基準緩和を活用した認定制度を創設し、一定の大きさ、性能、運行地域等の条件を付すことで安全を確保しつつ、公道走行をより簡易な手続きで可能とするための認定制度が整備されてきている(超小型モビリティ)。


フロスト&サリバンでは、より現実的なマイクロモビリティの可能性を理解することを目的として、ロンドン、パリ、シュツットガルト、ミラノ、ブリュッセル、ニューヨーク、横浜、北京といった購買余力がある都市で、合計約5千人を対象に、ユーザー調査を実施した。


当調査によれば、対象都市全体の63%の移動は、主に自動車といった個人の移動手段で、また31%の移動は、電車やバスといった公共交通機関を使って行われていることが分かった。横浜やニューヨークでは、個人移動手段の割合が全体より少なく、およそ50%であった。これらの都市では、交通渋滞によるストレス、高い駐車場や渋滞税、所要時間が不確実といった理由で、車での移動が他の都市ほど好まれないからであると考えられる。



現在、マイクロモビリティはそれほど一般的ではないが、認知度は比較的高い。マイクロモビリティに大変興味がある、もしくは興味があると回答した人の70%が、マイクロモビリティを何らかの形で知っている、と回答している。北京での認知度は特に高く、89%の回答者がマイクロモビリティを知っていると回答している。横浜やニューヨークでは、マイクロモビリティの受容性(利用に何らかの興味がある)は約25%と低いものの、認知度はともに約65%と低くはない。


マイクロモビリティが市場に出てきた場合、現在の移動手段にはどのような影響が出るのであろうか。マイクロモビリティに何らかの興味がある回答者(全体の35%)においては、将来、半分の移動がマイクロモビリティに切り替わる可能性がありそうだ。特に、減少率はバスとタクシーが高く、6割前後の利用がマイクロモビリティに切り替わる可能性がある。


マイクロモビリティのタイプについて、人々は、現在の移動手段に近いタイプのマイクロモビリティに切り替える傾向があり、自動車での移動(56%)は自動車タイプのマイクロモビリティに、自転車の移動(42%)は自転車タイプのマイクロモビリティに切り替わる可能性がある。電車とバスは、自動車タイプのマイクロモビリティに切り替わる可能性が高そうである。人々は、マイクロモビリティを現在の移動手段の代替手段としてのみ考えており、現在の移動パターンが劇的に変わることはなさそうということである。

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また、マイクロモビリティは、保有の概念を変えるかもしれない。調査の結果では、自動車タイプのマイクロモビリティで移動する場合の32%はシェア、レンタル、リースが好ましいと回答者は答えている。マイクロモビリティは、鉄道など他の交通機関へのラストマイルコネクティビティを提供するため、保有よりシェアが好ましいのであろう。


ただし、多くの大都市では、既に自動車やバイク、自転車などで混雑しており、駐車場所なども課題である。また、インフラも、車道、自転車専用レーン、歩道など既に整備されており、マイクロモビリティ専用レーンを作るのも難しそうである。マイクロモビリティは、新しい車両コンセプトであり、現状では多くの都市で、マイクロモビリティが公道を走行することは出来ない。マイクロモビリティが、代替移動手段として使えるようになるために、政府が早急に法整備を整えることが重要であるが、マイクロモビリティが、近距離移動やラストマイルコネクティビティを提供する将来のモビリティ解決策になるだけでなく、足が不自由なお年寄りなどの新たな移動ニーズを生み出すことは間違いないだろう。

※本コラムは、2014年9月22日付の日刊自動車新聞に掲載されたものです。